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第27回  Mattsu「夏がくれば思い出す」

まっつです。 さて、今回コラムを担当することになったわけだがー、なになに、お題は「夏が来れ ば思い出す」ですか。
夏、そうねえ・・・何もないんだよな、夏。思い出らしいものが。

記憶のアルバムを半ば強引に紐解いてみますか。どっこいしょっと。

 

[干乾びたおたまじゃくし]

少年のすんでいたマンションは、すぐ裏に山があり、広い公園も近くにあったりと、 自然に恵まれていた。この公園には人口の日本庭園風の池があるのだが、夏になると 山から下りてきたカエルたちが卵を産み付けるのだった。

直径1センチ弱程度の長細い寒天状の糸に黒い点々を携えたその卵は少年の好奇心を 掻き立てるには十分な代物で、「これ、家に持って帰ったらおたまじゃくしを捕まえ る必要がなくなるな」ということで、早速一塊を掬い上げて家に持ち帰ったのであっ た。

南向きのベランダに置いたバケツに入れられたその卵からは、やがてただの点々から 尻尾の生えた小さなおたまじゃくしが無数に孵化したのだった。

労せずにたくさんのおたまじゃくしを手に入れた少年は満面の笑みを浮かべるのだ が、その驕りが悲劇を招く!

バケツでは飼育が難しいと判断した少年は大きめの発泡スチロールの箱を入手して、 そこにおたまじゃくし を移したのだが、表面積が増えた発泡スチロールの中の水は、照りつける夏の日差し によって瞬く間に蒸発してしまったのである。もしかしたら数日間、目を放したん だったかもしれない。

気がついた時には、箱の中のおたまじゃくしたちは哀れカリカリの黒点と化していた のであった・・・・

そのおぞましい光景は水の腐ったような生臭い臭気とともに、少年の脳裏に焼きつい て離れないのであった。

 

少年の名誉の為に言っておくと、前年の猛省を踏まえて翌年はおたまじゃくしをカエ ルに育てることに成功している。カエルになったら餌があげられないぞという親父の 忠告を聞いてすべて裏山に放してあげたのだが、その夜窓から聞こえてくるカエル達 のなき声に親父が言った「ほら、カエルさんたちが育ててくれてありがとうって言っ てるよ」という言葉に、つい涙ぐんでしまったのだった。アホすぎて可愛いなあ、少 年。

 

[ビール購入]

中学・高校時代の悪友(つってもたかがしれた悪さだが)のひとりが伊東温泉に別荘 をもっていた。別荘といっても木造2階建てで全室タタミ敷き、どちらかというと湯 治場みたいな感じの一軒家で、毎年夏休みに気心のしれた友人だけで2〜3泊して、 自炊したり泳ぎにいったり飲んだり、そう、呑んだりするのがお決まりのイベントで あった。

それは確か高校1年のときだったと思うのだが、仲間内で伊東行きの打ち合わせをし ているとき、ふと誰かが言った。

「酒、のまねー?」 

「サケ?何言ってんだよテメーまだ未成年じゃねえか酒飲みてーなんで百万年早えー んだよガキのクセにいきがってんじゃねーよこのホーケーヤローボケカス!!」

などと反対する人間は一人も居らず、満場一致でおサケというものをしてみんとてす るなり、ということになった。

担当はじゃんけんで決めたと記憶している。そして少年は大事な場面でのじゃんけん に滅法弱いのであった。実行犯の大役を仰せつかることになったのだ!

仲間から預かった資金を握り締めて、少年は途方にくれた。「どーしよー。どこで買 おう」

黙って自宅の在庫を持ち出せば、当然親にばれる。近所で購入すれば未成年であるこ とはばればれだし、もし「お遣いなんですう」などとごまかしても、直後に親本人が 登場して「あれ、さっき息子さんお遣いにきましたよ」となったらうまくない。さら に!当時発泡酒はまだ存在しないし、サワーなんて安価な商品もメジャーではなく、 普通の酒屋にあるような国内ブランドを大量購入するには高校生のお小遣いはあまり に少ないのであった。

考えた挙句少年はひとつの案を思いつく。そうだ、あの店に行こう。

あの店とは以前両親とくるまで出かけたディスカウントストアのことだった。ヒトの 出入りが多いので、お遣いで酒を大量購入する子供も少なくないだろう。店員もいち いち覚えてはいまい。自宅から普通なら車を使う距離なので、両親に見つかることも 考えにくいし、なにより安く購入できるはずだ!そう思ったのだった。

自宅から店までの移動距離を実は今日始めてgooで検索してみた。片道16.2キロ、往 復で32.4キロ・・・・ 正直、どれくらい時間が掛かったかは覚えていない。ただ、照りつける太陽の下で幹 線道路沿いの歩道をひたすらチャリンコを漕いでいるのがとても辛かったことは覚え ている。

やっとの思いで店にたどり着くと、次に待っていたのは背徳の高揚感。ケーサツにタ イホされちゃったらどうしよう、などと考えながら、しかし感情が顔に出たら却って 怪しまれるぞと自分に言い聞かせて、いつもお遣いに来ているような冷静なそぶりで 店の中へ。

お遣いを装うためにあらかじめ用意したメモ用紙をみて、商品を探す振りをしながら 一番安いビールを探す。購入予定はビール350缶20本くらいと割って飲めそうな安い お酒

。 「これじゃないなー」とわざとつぶやく位にして、ついに購入したのが、グリーンの 変なビールと一番安かったジン。まあ、考えてみればクアーズとビーフィーターだっ たんだから今考えてもまあまあな買い物だな。

商品を抱えてレジに向かった少年はここでもアホぶりを発揮。聞かれてもいないのに 店員に「おとうさんのおつかいでかいにきたんですけれど・・・・」という始末。し かも緊張しているから声うわずってるし。

おのれ却ってあやしいぞ。

しかーし。店員さんはそんな少年の心意気を買ってくれたのか、何も言わずに清算し てくれたのであった。

帰りは大役を務め上げた安堵からか、行きよりも時間が短く感じたのを覚えている。 天気が崩れてきて陽が陰ったからだったかもしれない。

後日、無事別荘に酒を持ち込んで、宴会を開いた翌日、少年は生まれてはじめての二 日酔いを経験することになるのだった。そりゃそうだ。少ないアルコールで酔っ払う ようにと、ビーフィーターのコーラ割を飲むたびに全員でスクワットしてたんだから ・・・・ ・ ・・・

 

というわけで「夏が来れば思い出す」第一部は終了。実は書いているうち に様々なことを思い出したんだけれね。ドラムを始めた時のこととか、「くさやと ニージマ」のこととか、「ビッグガンクロス」のこととか。 それなりに悪ガキだったんだと今更自覚。てか、悪さっていうよりちょっとした冒険 だと思うんだよね、こういうのは。 いまの子たちって、リアルで冒険してるのかなあ。人間関係が希薄になったことが理 由なんじゃないのと感じる親族殺人や無差別殺人のニュースをみるにつけ、そんなこ とを考えるまっつでした。